トレーニング用語辞典ssk-japan

筋力トレーニング・スポーツ栄養学・スポーツ医学に関する用語の解説

◆アナボリックの解説(もくじ)

◆アナボリックとは?

 アナボリックとは、筋肉と栄養成分であるアミノ酸分子の結合体となったタンパク質分子が同化することを指す。

 激しいウエイトトレーニングを行なう際などはプロテインを事前に摂取しアナボリック状態を作り上げてトレーンングを行なうことで筋肉は適切な成長を果たすことが可能となる。

 尚アナボリックは一般的にステロイド剤などとして把握されているが、筋肉増強剤などに使用される男性ホルモンのステロイドはアナボリックステロイドでありアナボリックという単語が意味する状態を指す言葉とは異なる点を把握しておく必要がある。(アナボリックステロイドについては後述)

 アナボリック状態の筋肉の成長は非常に優秀であり明らかに高い成長を示す。

 これは男性ホルモンであるテストステロンが筋肉細胞の形成に大きく関与する働きと同じでアナボリック状態となった筋肉は同一のトレーニングメニューをこなしたとした場合、特に筋肥大や持久力の向上など身体的な能力のサイズ向上に大きく関与する事が確認されている。

 対してカタボリック状態では、筋細胞内のタンパク質を分解してエネルギー源を蓄えようとする為、筋繊維ないし筋細胞組織を犠牲にすることになる。

◆アナボリックステロイドとオリンピックの関わり

 筋肉の成長に大きな影響を与えるアナボリック状態を意図的に形成するステロイドホルモンの代表がアナボリックステロイドである。

 テストステロン物質の筋肉増強作用は従来から確認されていたが、注射などで体内へホルモン補充を行った場合は、

●肝臓によってテストステロンが代謝

 されるため、作用時間が乏しいことが指摘されていた。

 しかしこの作用時間に大きな改善をもたらすことになるアナボリックステロイド剤の登場により、特にスポーツ競技などにおける人体能力を純粋に競い合う分野では、世界の多くの国々で開発が勧められ、一時4年に一度行われるスポーツの祭典であるオリンピックではステロイドなしでは記録が取れないような風潮さえ生まれている。

 このように身体能力の向上に関しては確かな効果が認められているアナボリックステロイドではあるが、服用に関して多数の副作用症状が発見されるようになり、また薬物使用によるパフォーマンス向上という概念がスポーツの理念、理想に適さない事などから、世界的にも社会問題としてアナボリックステロイドの使用に関する考え方に変化が生まれるようになっている。

 尚、実際にオリンピックにおいてアナボリックステロイドの使用が厳格に禁止となったのは1976年7月17日~8月1日にかけてカナダで開催されたモントリオールオリンピックである。

 このモントリオールオリンピックで最も話題を集めたのは体操競技において史上初の10点満点を叩きだしたルーマニアの妖精と呼ばれたナディア・コマネチ選手。

 しかし、大会の舞台裏を覗くと1896年4月6日にアテネで行われた第1回にあたる近代オリンピック以降、全てのオリンピック大会で圧倒的な強さを誇っていたアメリカが史上初の金メダル数世界3位という結果に終わっている。

 尚、オリンピックにおける薬物検査の精度レベルは年々技術力が向上しており、競技終了後の尿検査などで反応が見つかり大会終了後に順位変更がなされるなどの事態も多く発生している。

 日本では男子ハンマー投げの室伏広治選手が2004年に開催されたアテネ五輪で優勝したアドリアン・アヌシュ(ハンガリー)にドーピング違反が発覚し繰り上げ金メダルを獲得している。

 また2008年の北京オリンピックでもベラルーシの銀メダリスト「ワディム・デフヤトフスキー」及び銅メダリスト「イワン・チホン」にドーピング違反が発覚。

 当大会で腰痛の為苦しみ5位に終わった室伏選手は一時繰り上げ3位で銅メダルとなったが、メダルの剥奪処分に対して

●スポーツ仲裁機構

 に申し立てを行なっていた2選手の申請が認められIOCが下した判決は翻され再び5位という結果となっている。

 アナボリックステロイドを使用した全ての選手が実際に好成績を収めることが出来るかどうか?これは間違いなく否である。

 どのような経緯が仮にあったとしても「結果を残した事実」を評価するケースもあれば、結果のためにルールを逸脱することは好ましくないと評価するケースもある。

 どちらが正しいという事はなく、これらの見解は国や地域、IOCや仲裁機構などのそれぞれの機関、そして当初のオリンピックがそうであったように時代によっても評価は異なるものである。

 両大会において繰り上げのメダル授与という経験をした室伏選手は特に笑顔も喜びもなく「健全に戦う」(おそらく最高の舞台で健全に今持っている能力で戦い会いたいという願い)と言葉少なく語っている。

◆蔓延する社会問題と今後の課題

 カルフォルニア州知事でありターミネーターとしても日本で広く知られるアーノルド・シュワルツネッガー氏はアナボリックステロイドの使用者であった事をドキュメンタリー番組で発表した事で知られている。

 オリンピア6連覇というボディビル界では当時異例の華やかな成績を収め、俳優、知事としても活躍するシュワルツネッガー氏もアナボリックステロイド剤の常用者であった事は一時波紋を呼んではいるが、彼自身はこの事実に対し「全く後悔はしていない」と語っている。

 また日本ではランボーなどのシリーズで知られるシルヴェスター・スタローンもアナボリックステロイドの常用者であったことを認めている。

 現在アメリカでは蔓延するステロイド問題に対して多くのドキュメンタリー番組が製作されており日本向けに通訳された製品も多い。

 自分には関係ないと感じているスポーツアスリートも一度このような実態とその背景に潜む問題について学習してみてはどうだろうか?

 尚、筆者の個人的な感想としては、ステロイド剤の使用問題に限らず、とにかく前述した室伏氏のように大舞台で正当な表彰を受けることが出来ずに、後に報道とともに

 「繰り上げでメダル獲得です」

 といった本人も観客も興冷めする発表だけは二度と目にしたくないと感じる。